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2022年 マリン10大ニュース決定

2022年 マリン10大ニュース決定

2022年12月28日

 マリンジャーナリスト会議では、恒例となっている「マリン10大ニュース」の2022年版を選定いたしました。選考に当たっては、2022年1月1日から11月30日までに国内で報道された主なマリン関連ニュースを事務局においてリスト化。そのリストを元に、当会会員による投票と審議によって決定いたしました。
※転載等は自由です。

 

1
太平洋ひとりぼっち。堀江謙一さん、史上最高齢で単独無寄港太平洋横断達成
ヨットで単独無寄港の太平洋横断を目指し、3月26日にアメリカ・サンフランシスコを出航した海洋冒険家・堀江謙一さん(83)が6月4日未明、約8500キロ、69日間の航海を経て、紀伊水道に設定したゴールに到着した。単独無寄港世界一周、 足こぎボートによるハワイ・沖縄間航海などに挑戦し、成功を遂げた堀江さんにとって、世界最高齢での記録達成。堀江さんは「生涯チャレンジャーでいたい」と既に次の航海を見据え、「今が青春の真っただ中。大器晩成を目指して頑張ります」と語った。

 

2
知床半島の観光船が沈没、乗員・乗客合わせて26名全員が死亡・行方不明
4月23日に北海道知床半島の観光船〈KAZU1(カズワン)〉が、斜里町の知床半島西海岸沖で消息を絶ち、船内浸水後に沈没した。乗員・乗客合わせて26名全員が死亡・行方不明なった。事故当日、現地では3時9分に強風注意報(風速15.0 m/s以上)、9時42分に波浪注意報(波高2〜2.5 m)が発表されていた。発航以前の時点で運航基準に基づく発航を中止すべき条件に達するおそれがあった旅客船事業に対する国の監督強化や、海上保安庁による救難体制強化のきっかけとなった。

 

3
石原慎太郎氏が死去、89歳
元東京都知事で、運輸相、旧日本維新の会共同代表などを務めた石原慎太郎元衆院議員が2月1日、死去した。89歳だった。一橋大法卒。在学中の1956年、若者の無軌道な生き方を描いた「太陽の季節」で芥川賞を受賞。その後、保守の立場からの評論活動を展開するとともに、国会議員、都知事としても活躍し、2015年に旭日大綬章を受章した。海を愛し、ヨットを愛した愛好家としても知られ、NORC(日本外洋帆走協会)会長等を歴任。日本での本格的なオフショアレースの開催にも尽力した。

 

4
スズキがマイクロプラスチック回収可の船外機を生産開始
スズキは7月22日、マイクロプラスチックを回収できる装置を搭載した船外機の生産を始めたと発表した。北米や欧州など船舶用エンジンの主要市場をはじめ全世界へ順次出荷する。ボートで走るだけで水面付近のマイクロプラスチックを回収できる仕組みで、同社によれば世界で初めての装置だ。標準搭載とすることで装置の普及を後押しし、環境問題対策につなげる。

 

5
警視庁が飲酒水上バイクを初摘発。都水上安全条例違反
酒を飲んで水上バイクを操縦したとして、警視庁大井署は6日、東京都水上安全条例違反の疑いで、千葉県八千代市の会社役員の男(44)を書類送検した。道交法と同様に酒気帯び状態で小型船舶を操縦することを禁じる水上安全条例は平成30年7月に施行されたが、大井署によると水上バイクの酒気帯びの摘発は初めてだという。

 

6
遠藤エミがボートレース史上初の女子SG制覇
第57回SGクラシックで、優勝戦1枠の遠藤エミ(34=滋賀)がSG初制覇を果たした。ボートレースは男女が同じ土俵で戦える希少な競技だが、ボートレースの約70年の歴史で、女子選手が最高峰グレードの大会を制したのは初めて。人気女子レーサーの快挙は、売り上げ右肩上がりのボート界がさらに活性化する大きなニュースとなった。

 

7
26.2mの巨大波に乗った! サーフィンギネス記録
高さ86フィート(約26.2メートル)の波に乗った記録が、5月24日ギネスワールドレコードに認定された。記録はドイツ人サーファーのセバスチャン・スチュードナー選手が、2020年10月、ポルトガル・ナザレのプライア・ド・ノルテビーチで、26.21 mの波に乗ることに成功したもの。この瞬間を紹介したギネスワールドレコード公式YouTubeチャンネルの映像には「凄い記録に凄い映像だな!」「めちゃくちゃクールだ」「クレイジーだよ」と衝撃の声が寄せられた。

 

8
横浜/ハンマーヘッドで「新港8号ビジターバース」の供用開始
かつて横浜港の荷役の中心を担い、現在は国際客船ターミナル(新港ふ頭客船ターミナル)を中心に、ショップ&レストランといった商業施設、ラグジュアリ―リゾートなどの複合施設として注目される「横浜ハンマーヘッド」に隣接して、プレジャーボートも一時係留が可能な「新港8号ビジターバース」の供用が4月1日よりスタートした。ビジターバースの桟橋の長さは全長115メートル。小型プレジャーボートはもちろん、スーパーヨット、メガヨットの係留も可能。

 

9
ネット時代にeSailingも公式競技に。認知が進む
ここ数年で急速に人気が高まっているeセーリング。「バーチャルレガッタ」というアプリを使って、いつでもどこでも、オンラインで世界中のeセーラーと対戦できる。World Sailing(国際セーリング連盟)が世界選手権を主催し、日本セーリング連盟には「仮想セーリング競技(ゲームを含む)の健全なおよび、普及、並びに現実に行われるセーリング競技とのシナジーの実現を図る」ことを目的としたeSailing委員会が設置されており、10月3日から開催された世界選手権に選手を選考し派遣している。また3月には初となるeセーリング版インカレである学生No.1決定戦が開催されるなど注目されている。

 

10
⽇本Sail GPチーム、離脱・解散を発表
2019年から参加6か国、全5大会で始まったSail GPは、新型コロナウイルスのパンデミックによる中断時期を経て、シーズン2は参加8か国全8大会、シーズン3は参加10か国全11大会と拡大。リーグが新しい会場、チームを追加し、世界的にファン、視聴者が拡大する中、各国チームはリーグから経済的自立を求められてきたが、経済的支援がなかった(スポンサー不在)であった日本チームは、活動の継続を断念。最終戦まで2位をキープした強豪チームにもかかわらず、離脱・解散することが決定した。

 

 

【10大ニュース講評】

 

潮気強き感動に感謝したい
中村剛司 マリンジャーナリスト会議・座長
 ここ数年を振り返ったとして、これほどのビッグニュースはあっただろうか。堀江謙一さん83歳、単独無寄港無補給太平洋横断成功(1位)。
 思い起こせば60年前。名著『太平洋ひとりぼっち』で綴られた堀江謙一さんの冒険譚は、昭和のヒーロー石原裕次郎さん主演によって映画化され、日本中を席捲する一大ムーブメントとなった。
 当時23歳であった堀江青年が太平洋横断にトライした艇はキングフィッシャー19。日本が誇るヨットデザイナー横山 晃さん設計の外洋艇、全長19.11フィート(約5.8m)のセーリングヨットであった。
 今回、堀江さんはその19フィートというサイズでの挑戦にこだわり、横山晃さんのご子息であり、ご自身の盟友である横山一郎さんに挑戦艇の設計を依頼。同サイズである19フィートのオーシャンゴーイング仕様のアルミ艇「横山19〈サントリーマーメイドIII〉」を建造し、見事に挑戦を成功させた。83歳での単独無寄港無補給太平洋横断は、ギネスブックにも認定されている。
 同年に、そのストーリーを演じきった裕次郎さんの兄であり、湘南魔火矢として相模湾のセーリングシーンをけん引したセーラー、石原慎太郎さんの逝去(3位)があったことは、涙なさずして語れない。
 続き、MJC10大ニュースではアンハッピーないくつかの話題が続く。知床観光船の痛ましき事故(2位)は、MJCとしても看過することはできない。しかし、この事故によって多くの議論がなされ、PLB(Personal Locator Beacon:携帯用位置指示無線標識)の必要性など、マリン業界にまさしく一石を投じた結果となり、今一度安全に関する問題提起があったことを前向きに捉えたい。もうひとつ、飲酒水上バイクを初摘発(5位)も、新たなルール改正の胚胎として多くの方に認知してほしいニュースであった。
 かたや、スズキが提案するマイクロプラスチックを回収できる船外機の生産開始(4位)は、まさにサステナブルでハッピーなニュース。SDGsなニュースはもっと増えるかと想像した。
遠藤エミ選手の女子競艇史上初のSG制覇(6位)は、多様性の時代を表わすエポックとして歓喜したし、独サーファーの26メートル巨大波乗りがギネス認定(7位)は、MJCメンバーのサーファー銘々の興奮にも感化され、心底驚いたニュースだった。
 神奈川県横浜港にハンマーヘッドふ頭開放(8位)は実にうれしいニュース。eSailing の国内団体戦開催(9位)など、eスポーツにおけるセーリング種目においても、世界に後れを取らない実績が日本にもあることに胸が高鳴った。世界最速のセーリングサーキット、サーカスであるSail GPから日本チームが撤退(10位)したことは未来の日本のセーリングシーンにとって、これほどの痛手はないと感じるところであります。
 2022年という年は、海を愛する皆さんにとってどのような年であったろうか。偉大なる先人による大きな希望をいただいた年であり、あらためてマリンシーンを審査する年であったかも知れない。
 海を好きな人間に悪い者はいない。この言葉に習い、正しく明るい未来に歩んでいきたい。

 

海ではトラブルが起こる
瀧学 マリンジャーナリスト会議・事務局長
 楽しく、華やかなニュースで埋め尽くされれば嬉しいが、毎年、いくつかの海難事故や不法行為などのネガティヴなニュースが必ずといっていいほど紛れ込む。今年は、北海道知床半島の観光船ニュースが2位となった。遭難に合い、命を落とされた方々、いまだ行方不明となっている方、そのご家族の方々に、何らかの慰めがあることを、この年の瀬に、改めて祈りたい。
 さて、この拙稿は、当たり前のことだが当会(MJC)の総意ではなく、また、声明といったものでもなく、海に関わる物書きの一人として書き連ねるものである。それをご理解いただいた上での個人の論だが、人という生き物が、海へ出ていく限り、海難は避けられない。国や行政が努力し、何らかの規制を用意してくれようが、関連団体が腐心して安全啓発を行おうが、である。事故をなくしたい、減らしたいという関係者の願いや施策には敬意を表し、もちろん賛同することの方が多く、国交省や海上保安庁には感謝もしているが、海での事故はなくならない。当たり前のことである。我々は人なのだから。
 今は面影もないが、私は学生時代、艇長として7〜8人の学生の仲間とセーリングクルーザーを運航し、関東以西の沿岸を行けるところまでクルージングしていた時期がある。その時の私は、海に対してかなり臆病であった。少しでも嫌な風が吹こうものなら、出港を取りやめた。クルージングの途中で台風が発生して避難した港では、これでもかというほど舫い綱を用意し、船が流されないようにと務めた。同世代の仲間は、そんな私を「臆病者」と内心でせせら笑っていたかもしれない。本音を言えば私にもどこか恥じるようなところがあった。それでも、自分のシーマンシップ(力量)は自分で判断していた。死にたくない、というのもあったが、それよりも、そのときに受ける恥より、何か起きたときに受ける恥辱の方が嫌だった。
 今はモータボートに乗ることが多い。場数も踏んだ。それでも高い波や強い風に対して、少しでも嫌な気持ちになったら出航は取りやめている。そんなとき、今でも臆病すぎる自分を恥じる気持ちが少しだがもたげてくる。だから、多少の無理をしてでも時化ているときに船を出してしまう人の気持ちはとてもよくわかるのである。みんながそうではないかもしれないが、そういう人もいる。つまり、「人だから」なのである。
 これでも、どうすれば海での事故を防げるかについては考える。なんとなく思うのは、艇長となる者自身と、艇長から見たクルー(乗船者といってもいい)の力量の把握、これに尽きると思っている。子どもたちがもっと海に親しみ、さまざまな体験をすれば、それは養われる。そう信じて、当会では“Kids, Go to the Sea”を提唱している。
 5位に上げられた飲酒運転の摘発については、送検されたユーザーの弁護はしない。ただ、ひとつ言いたいのは、ネットのニュースのコメント欄などで見る、水上オートバイを悪者扱いする風潮には、正直に申して “うんざり”している。水上オートバイは、水に親しむ上で、とてつもなく魅力的な乗り物であり、遊び道具である。乗ってみればわかる。
 私としてはその乗り物と利用者を全力で応援したい。業界団体は、水上オートバイという乗り物を理解してもらうべく、さまざまな安全対策活動を行っている。ユーザーも同じだ。これも私の取材経験からすると、他人に迷惑をかけまいとする気持ちについては、SUPやカヌーなど非動力船(板)、モータボートのユーザーよりも、高いのではないかと感じている。
 それでもトラブルはなくならない。批判もなくならない。人という未熟な生き物が関わっているからである。
 そのことを理解しつつ、私自身は海に出続ける。巷のニュースや批判コメントから感じられるネガティヴな要素を相殺し、それらをはるかに超える宝が海にはあるからである。